「マレーシアでは何語を話すの?」
「マレーシアに旅行をするときは英語が話せるとOK?」
マレーシアの言語事情について、上記のように悩むことはありませんか?
出張や旅行でマレーシアに行くことになった場合「コミュニケーションはどうする?」という点が、頭に浮かびますよね。
そこで、本記事ではマレーシアのユニークな言語事情や旅行に使える挨拶についてご紹介します。
初めてマレーシアに行く方はもちろん、他の文化に興味のある方はぜひ最後までお読みください。
マレーシアで話される主な言語は4つ?言語事情をご紹介!
マレーシアで話される主な言語は、次の4つです。
- 英語
- マレー語
- 中国語(普通語・華語)
- タミール語
マレーシアは、多民族国家。
単数民族である日本とは異なり、マレー民族・中華系民族・インド系民族・原住民などいろいろな民族が生活しています。
その結果、あらゆる場所で、いろいろな言語が飛び交うという面白い現象が……。
日本では日本語のみで話すことが当たり前なので、マレーシアに来ると驚かれるかもしれません。
マレーシア人がコミュニケーションを取るのは何語?
多くのマレーシア人は、2〜3言語を操るため、相手によって言語を使い分けコミュニケーションを取っています。
例えば、マレーシアでよくある状況をご紹介します。
- Aさん:マレー語・英語を話す
- Bさん:英語・中国語を話す
- Cさん:タミール語・英語・マレー語を話す
AさんとBさんがコミュニケーションをとる方法は、英語。
AさんとCさんがコミュニケーションを取るときにはマレー語。
しかし、AさんとCさんが話しているところにBさんが加わった場合、3人は英語に切り替えて話を続けます。
マレーシア人は、相手がどの言語を話せるのかによって、話す言葉を上手に使い分けられるのです。
びっくりするほど違和感なく突然に切り替えるので「今何語を話しているのだろう?」と、混乱することも珍しくありません。
マレーシアの主な言語は4つ!割合は?
日本の外務省データによると、マレーシアで生活している民族の割合は下記の通りです。
- マレー民族(先住民族も含む):70%
- 中華系民族:23%
- インド系民族:7%
※参照:外務省サイト(マレーシアの基礎データ)
単純計算するとそれぞれが自分の民族の言葉を話すと仮定した場合、マレー語を話す民族が圧倒的に多いことになります。
マレーシア独特の言語文化
マレーシアは、独特の言語文化があり、とてもユニークです。
独特の言語文化の一部を、紹介します。
【その①】イングリッシュならぬマングリッシュが存在する
マレーシア人は英語を話せますが、ネイティブが聞くとびっくりするほど独特な英語です。
マレーシアで話す英語のことを、マングリッシュと表現することもあります。
例えば三単現の「S」・過去完了など細かい英語文法を気にせずに話します。
また「Yes or No?」「Can?, Cannot?」のように、二択で質問をすることも少なくありません。
マレーシアの英語が独特になったのは、いろいろな言語とミックスされたからだといわれています。
例えば、中国語の「是不是?」「可以不可以?」をダイレクトに訳し「Yes or No?」「Can Cannot?」と話すようになったのではないかと考えられています。
【その②】いろいろな言語をごちゃ混ぜにして話す
マレーシアでは、いろいろな言語をごちゃ混ぜにして話すことも当たり前です。
英語・中国語・タミール語で話しているとき、いきなりマレー語の単語を交ぜて話します。
また、英語で話していたのに、途中で中国語に切り替えて話すことも珍しくありません。
マレーシアに初めて来た人は「英語で話していたのに、いきなりマレー語や中国語の単語が紛れ込んできた」と、驚きます。
【その③】華僑(インド系)だからといって中国語(タミル語)が得意とは限ら
マレーシア人は華僑が中国語を母語(インド系の母語がタミル語である)と、決まっているわけではありません。
中には、中国語が苦手な華僑も存在します。
また「中国語を話せても読み書きはできない(タミル語を話せても読み書きはできない)」なんてことも珍しくありません。
「華僑だけど、マレー語や英語の方が得意」というマレーシア人もいます。
マレーシア人がどの言葉を得意とするかは、何語の学校に通ったか、家族が何語を話しているかが大きく関係しています。
マレーシアには4つの言語がありますが、学校も4つの言語に分かれているからです。
華僑であっても、英語学校やマレー語学校に通った場合、英語やマレー語の方が得意になるのです。
【その④】家族や兄弟でそれぞれ母語が異なることもある
マレーシアでは、家族や兄弟の母語が異なることも珍しくありません。
例えば、下記の状況が存在します。
- お父さん:母語は英語か広東語
- お母さん:母語は中国語(普通語)
- 姉:母語は中国語
- 妹:母語は英語
「母語が異なる一体どのようにコミュニケーションを取るのだろう?」と、不思議に思われるのではないでしょうか?
上記のような状況では、多くの場合、英語か中国語でコミュニケーションを取っています。
マレーシア人は2〜3言語を操り「読み書きはできないけど話すのは問題ない」人が多いからです。
日本では考えられないことですが、マレーシアの家庭では普通に起こっています。
【その⑤】母語が分からないと答える人もいる
マレーシア人は2〜3ヶ国語を話しますが、自分の母語は何かと聞くと「分からない」と答える人も珍しくありません。
例えば、次のような状況が現実に起こっています。
「家では広東語を話すけど、実は中国語の読み書きができない」
「話すのは英語の方が得意だけど、マレー語スクールに行ったから読み書きはマレー語の方がスムーズ」
事情を正しく理解していない外国人が、マレーシア人に対して「母語の話題」を突っ込むと、戸惑った表情になることがあります。
マレーシア人にとって母語をテーマにした話題は、時には繊細なトピックになるからです。
2〜3か国語を操ってカッコいいと思うと同時に、複雑な気持ちになることもあります。
最後にlah(ラ)をつけるのがマレーシア流
マレーシアではなぜか最後に「lah(ラ)」をつけて話します。
例えば「OK!」「Sorry」というときに「OK lah!」「Sorry lah」と言います。
「lah」をつけて話すと、一気にマレーシアっぽくなり、ローカルとの距離がぐんと近くなるから不思議です。
どのタイミングで「lah」を使うのかについては、感覚的な要素が強いです。
しかし、間違ってもトライしてみると、マレーシア人と仲良くなるきっかけにもなります。
「このタイミングでlah!を使うのはマレーシアっぽくない」と教えてもらえ、会話も弾むかもしれませんよ。
マレーシアの公用語
マレーシアの公用語は「マレー語」です。
しかし、上記の項目でも紹介した通り、マレーシア人だからといってマレー語が得意だとは限りません。
特に最近は「自分たちの民族の言葉を大切にしよう」と考え、子供を民族の言語に特化した学校に通学させる親たちが多くなっているからです。
今後のマレーシアの課題は、民族のアイデンティティを尊重しつつ、どのように言語を統一させるかについて考えることです。
※参考:マレーシアの国家統合に向けた言語政策の展開と課題(武蔵野学院大学大学院)
旅行者がマレーシアに行くときの言語面の心構えをご紹介!
出張や旅行でマレーシアに行くことになったときには、言語事情を考えて次のことで不安になるのではないでしょうか?
「どの言語を話せばよいのだろう?」
「いくつもの言語を操るなんてできない」
マレーシアでコミュニケーションを取るのは、難しいことではありません。
マレーシア人は、とってもフレンドリー。
言語が苦手でも頑張って話している人を、優しく受け入れてくれます。
もともといろいろな言語が入り混じった中で生活しているマレーシア人は、リスニング力がとても高く、大体のことは察知してくれます。
「苦手な言語を使ってコミュニケーションを取ることの大変さ」をよく理解しているので、他の人のことも馬鹿にしません。
特に、下記の2つのことを心がけておくと、たいていの場所でスムーズにコミュニケーションがとれます。
英語が話せると問題ない
マレーシアでは英語が話せると、大抵の場合、問題ありません。
空港・移動中・観光地・ショッピングモール・食事所など、ほとんどの場所では英語が通じます。
特にクアラルンプールをはじめとする、人気の観光地ではほぼ間違いなく英語でコミュニケーションが取れるでしょう。
しかも、ネイティブのようにスムーズに話せなくても、カタコトの英語でもOKの場合がほとんどです。
旅行者にとって、ハードルが低い国だといえます。
田舎に行く場合はマレー語が必要な場合も多い
マレーシアでは、田舎に行くに従ってマレー語の必要なケースが増えてきます。
英語の不得意なマレー民族の割合が、増えてくるからです。
マレー民族はマレー語を母語とするため、必然的にマレー語が必須になります。
私たちが英語で話しかけても「は?」と言わんばかりの対応をされることも、珍しくありません。
田舎に行く予定がある方は、簡単なマレー語を知っていた方がスムーズです。
旅行で便利なマレーシアの挨拶をご紹介!
旅行や出張でいざという時のためにも、簡単なマレー語の挨拶を知っておくと便利です。
困った場面ではもちろんですが、英語で通じる場面でも、あえてマレー語を混ぜて話すなら、喜ばれることが多いからです。
本項目では、知っておくと便利な挨拶をご紹介します。
困ったときのスダ・マカン
「スダ・マカン」は、直訳すると「ご飯食べた?」という意味ですが、マレーシアでは挨拶がわりに使います。 例えばマレーシア人は「ハロ〜!スダ・マカン?」という感じで、挨拶します。 「スダ・マカン」に対してご飯を食べてきた場合「スダ」。
まだの場合は「ブルム」と返事を返すのが一般的です。 マレーシア人にとって「マカン(ご飯)」はとても大切なこと。 どこで、誰と何を食べるのかをとても重要視しています。
会話に困ったら、とりあえず「スダ・マカン」と言ってみましょう。 その後、ご飯の写真などを相手に見せると完璧です。
マレーシア人と打ち解けやすくなります。
マレー語は話せません。英語で話してください
「マレー語は話せません。英語で話してください」は、マレー語で「タボレ チャカ バハサ マラユ。ボレ チャカ バハサ イングリス?」です。 特に「英語が通じなくて困ったな……」という状況で使うと便利です。
相手も英語が苦手だった場合でも、こちらがマレー語が話せないと分かると「仕方ないなあ〜英語で話すか」となることも少なくありません。 本当に英語が話せない人は、わざわざ話せる人を連れてきてくれることもあります。 私たちだって、ネイティブからいきなり流暢な英語で話されると、びっくりしますよね。
でも相手がカタコトでも「ニホンゴ……ハナセマセン……」というと、なんとかして英語で話してあげたいと思うのではないでしょうか? もともとフレンドリーなマレーシア人も、こちらがマレー語が話せないと分かると、親切に対応してくれることが多いのです。
ありがとう
「ありがとう」は、マレー語で「テリマカシ(セ)」です。 もちろん英語の「thank you」でも十分ですが、ここはあえて「テリマカシ(セ)」というと、さらにフレンドリーな印象になります。 ちなみに「テリマカシ(セ)」と言われたときには「サマサマ(どういたしまして)」と返しましょう。
こんにちは
「こんにちは」は「サ(ス)ラマッ トゥンがハリ」です。
しかし、マレーシアでは「サ(セ)ラマッ トゥンがハリ」より「ハロー」と挨拶する方が多いように感じます。 「ハロー?アパカバ(元気ですか)?」か「ハロー?スダ・マカン?」という方が一般的です。 しかし、なぜか朝は「サ(ス)ラマッ・パギ」夕方は「サ(ス)ラマッ・マラム」と挨拶します。
さようなら
「さようなら」は「ジュン・パラギ」です。
別れ際に「ジュン・パラギ〜」と挨拶します。
しかし、普通に英語で「bye-bye」「See you」という場合も、少なくありません。
元気ですか
先ほども紹介しましたが「元気ですか?」は「アパカバ?」です。
多くの場合、英語の「hello(ハロー)」や「Hi(ハイ)」と一緒に、「ハイ!アパカバ?」と挨拶します。
「アパカバ」に対する返事は「カババイ(元気です)」です。
私の名前は○○です
「私の名前は○○です」は「ナマ・サヤ・○○」です。
もちろん、英語で自己紹介しても問題ありません。
日本人です
「日本人です」は「オラン・ジャポン」です。
日本人である私たちが知っておくと、重宝します。 黄色人種である私たちは、マレー民族やインド系民族から「中華系マレーシア人だ」と勘違いされることが多いからです。 私たちからしたら「中国人・韓国人・日本人は見た目が違う」と思いますが、他民族からすると見分けがつかないことも。
中華系と思い込んで「マレーシア人なんだから話して当然だろ」といわんばかりに、マレー語で話しかけられることも珍しくありません。 そんなときに「オラン・ジャポン」というと、相手も「ああ!日本人だったんだね」と、理解してくれます。
まとめ
マレーシアは他民族国家なので、さまざまな文化・言語が入り交じっています。
2〜3言語を上手に操るマレーシア人のリスニング力とスピーキング力は、かなり優れています。
しかし一方で「話せるけど読めない言語も存在する」「家族で母語が異なる」など、独特な問題も存在します。
単一民族国家である日本人からすると、マレーシアの状況を完全に理解するのは難しいかもしれません。
しかし、よくコミュニケーションを取れば取るほど、状況を少しずつイメージできるようになります。
母語以外の言語を話す苦労を知っているマレーシア人だからこそ、日本人が外国語で話す難しさを理解してくれるのです。
マレーシア人は一生懸命に話そうとする日本人を、温かく受け入れてくれる優しさを持っている国民です。