カンボジアの遠方遺跡の1つでもある、コーケー遺跡。カンボジアの遺跡の中ではめずらしく、ピラミッド型をしています。今回は、そんなコーケー遺跡について、歴史・見どころ・行き方など詳しくご紹介していきます。
コーケー遺跡の歴史
コーケー遺跡は、10世紀末ごろに建てられました。アンコールワットの建設が始まったのが12世紀初頭と言われているので、コーケー遺跡は、アンコールワットよりも古い遺跡にあたります。そしてコーケー遺跡は、アンコールワットと同じ、ヒンドゥー教寺院として建てられました。
928年、ジャヤバルマン4世が王に即位すると、シェムリアップにあった王都を、郊外であるコーケーに遷都しました。それは、ジャヤバルマン4世の出身地がコーケーであったからとも言われています。王都をコーケーにしてからは、複数のヒンドゥー教の寺院を建てたり、ラハールと呼ばれる貯水池(バライ)をつくり、王都の繁栄を願いました。最盛期には、コーケーに1万人の住民がいたという記録もあるそうです。
息子ハルシャーヴァルマン2世の代まで、コーケーは王都でありました。ジャヤバルマン4世が亡くなった後、ハルシャーヴァルマン2世が王に即位してまもなく、友人でもあり従兄でもあったラージェンドラヴァルマン2世に王の座を奪われてしまいます。その後再び王都はシェムリアップに戻されました。コーケーは王都であったのは、928年から944年ごろまでと言われており、約16年の短い期間でした。
ところで、この「ジャヤバルマン」という名前は、遺跡解説中にガイドさんからよく耳にする名前だと思います。アンコール朝の歴史を語るには、欠かせない名前で、日本の歴史で例えれば、「徳川」といったところでしょうか。一番有名なジャヤバルマンは、ジャヤバルマン7世です。ベトナムのチャンパ軍からアンコールワットを奪還した英雄で、アンコールワット、アンコールトム、タプロームの遺跡解説には欠かせない、人物です。
少し話がそれましたが、こうしてコーケーは一躍、王都として発展をしましたが、その後二度と王都になることはありませんでした。長い間、ジャングルに放置されていたコーケー遺跡は、まだ謎が多い遺跡の1つです。81平方キロメートルの保護区域に60以上の神聖なエリアや遺跡が発見されているそうですが、現在はそのうちの20ほどの遺跡しか、一般には観光ができません。
コーケー遺跡への行き方・入場料
コーケー遺跡へは、車の移動がおすすめです。シェムリアップから片道2時間30分から3時間ほどで行くことができます。コーケー遺跡のツアーに参加したり、車をチャーターする方法があります。
そのほかの遺跡と組み合わせるのなら、ベンメリア遺跡がおすすめです。こちらも謎多き遺跡の1つなので、2つの遺跡を楽しみつつ、効率的に観光をすることができます。あともう1つは、プレアヴィヒアです。せっかく遠方に行くなら、まとめて観光してしまいたいという方におすすめです。移動時間が多くなる分、少し遺跡観光時間が限られます。
コーケー遺跡は、現在アンコールパスと別途で15US$の入場料が必要になります。2023年9月に世界遺産に登録された関係で、今後値上がりの可能性も考えられます。
コーケー遺跡の見どころ
コーケー遺跡の特徴は、巨石を使ったものが多く、全体的にスケールが大きいところです。大きな柱だと、高さ4.7m、縦横0.8m、重さは7tになるものもあります。また、長くジャングルに放置されていた影響もあり、遺跡の損傷は激しいですが、王都だった当時は、アンコールワットにはない、コーケーオリジナルの美術様式が発展していたと考えられています。それでは、そんなコーケー遺跡の見どころポイントをいくつかご紹介していきます。
プラサット・プラム
コーケー遺跡群の中でも、手前の方にあるのが、プラサット・プラムです。レンガ造りの祠堂にガジュマルの木が力強く絡みづいています。プラムとは、数字の5を意味します。そのため、このエリアには5つの祠堂があります。5つの祠堂のうち、今でも中に入ることができるものもあります。昔はこの祠堂の中で儀式を行って、祈りをささげていたそうです。
プラサット・ニエン・クマウ
プラサット・プラムのすぐ近くにあるのが、プラサット・ニエン・クマウです。ニエンは女性、クマウは黒を意味しており、「黒い貴婦人」と呼ばれている遺跡です。他の遺跡と比べると、遺跡の表面が黒いです。原因は、火災の説もあったり、石に含まれている鉄分が酸化した説もあったりと、いくつかの説があります。この祠堂は、シヴァ神にささげられたものと言われています。
プラサット・チュラップ
プラサット・チュラップは、このように崩れた祠堂が3つ並んでいます。崩れた祠堂を見ると、切ない思いやはかない思いに包まれますが、一方で崩れたレンガの間からまた草木が成長しているところに、自然の生命力を感じます。
また、プラサット・チュラップも他の遺跡と比べると黒いことから、やはりプラサット・ニエン・クマウが黒いのは、火災ではなく、鉄分の酸化が原因なのかなとも感じます。
プラサット・ドムライ
ドムライは、象を意味します。プラサット・ドムライには、比較的状態のよい象が残っています。また、象のほかに、ライオンの像もあります。象とライオンで取り囲むように祠堂が守られていたようです。
プラサット・リンガ
リンガとは、男性のシンボルをかたどった、シヴァ神の象徴です。子孫繁栄や作物が豊かに実るように願う、信仰の1つです。
リンガの上に水をかけると、水路からトンネルを通り、上記写真の穴から水がでてきます。その水が聖水として、当時は儀式などで使われていたそうです。
プラサット・クラチャップ
プラサット・クラチャップは、病院として使われていたと言われています。西門の柱には、写真のような当時の碑文が残されています。
また東側の門には、比較的保存状態のよい彫刻も残っています。水牛に乗ったヤマ(閻魔)ではないかとも言われています。
プラサット・クラハム
赤い祠堂とも呼ばれています。プラサット・クラハムは、東塔門として建てられました。一部彫刻が残っている部分もありますが、このように彫刻が削り取られたり、堂内にあったシヴァ神の像は盗難の被害にあったと言われています。
プラサット・トム
プラサット・トムは、かつての王都の中心があったと考えられています。プラサット・トムの入り口には、石柱が並んでいましたが、ほとんど倒壊しています。ですが、当時最大の寺院であった証拠に、寺院の中には連子窓の彫刻が残っていたり、寺院の周囲は今でも美しいお堀が配置されています。
また、プラサット・トムでは、高さ2メートルもあるガルーダ像が発見されています。そのガルーダ像は、現在プノンペン国立博物館で見ることができます。
プラン
プラサット・トムを通り抜けると、ようやく7段のピラミッド遺跡プランが出てきます!高さは約35メートルと近くでみると、とても迫力があります。以前は、頂上へ登ることができませんでしたが、現在は頂上までの道が整備されたため、登ることができます。登頂部分には、巨大な土台の石が残っています。そこから、土台の石には大きなリンガが存在し、そこで儀式を行っていたのではないかと考えられています。
プノン・ドムライ・ソー
プランの西側には、丘があり、そこには、象の像があります。ドムライ・ソーとは、白い象を意味し、地元の人からは白象の墓と呼ばれています。ときどき地元の人がお供えやお参りをしています。なぜここに白象の墓があるかというと、昔このコーケーのあたりで白象が亡くなったという伝承があるからだそうです。この伝承は、コーケーだけでなく、ベンメリアや大プリア・カン周辺の人々も昔は知っていた有名なお話だったとか。
コーケー遺跡観光中の注意点
コーケー遺跡エリアは、内戦中は激戦地でした。そのため、今でも多くの地雷が残っています。今回ご紹介したコーケーの各遺跡は、すでに地雷は撤去されているので、安心して観光することができます。ただ、「地雷注意」の看板をこえて森の中に入ったり、ガイドが案内していないエリアに入ることは、とても危険です。地雷の看板に注意したり、ガイドの指示に従って観光するようにしましょう。
コーケー遺跡周辺情報
コーケー遺跡のすぐ近くに、ローカルレストランがあります。ローカルメニューをトライしてみたい方はここでランチもいいかもしれません。道中にあまりレストランがないため、ほとんどのツアーでは、お弁当付きのプランとなっています。
ホテルについても、コーケー遺跡周辺にはありません。シェムリアップを拠点に観光するのがベストです。
映画の舞台になった遺跡?
コーケー遺跡と検索すると、ジブリ映画の「天空の城ラピュタ」や「トゥームレイダー」が関連ワードでできます。コーケー遺跡は、これらの舞台になったのでしょうか。確認したところ、どちらの映画の舞台にもなっていませんでした。
「天空の城ラピュタ」は、コーケー遺跡の雰囲気と映画の世界観が似ていることから、関連ワードで出てきていたようです。確かに、壊れかけたコーケー遺跡の雰囲気は、ジブリ映画のような世界観があります。
「トゥームレイダー」は確かにカンボジアで撮影されました。しかし、ロケが行われたのは、タ・プローム遺跡でした。
世界遺産に登録(2023年9月)
2023年9月17日にコーケー遺跡が世界遺産に登録されました!アンコールワット、プレアヴィヒア、サンボ―プレイクックに続いて、カンボジアでは4番目の世界遺産です。世界遺産登録をきっかけに、人気が高まりそうです。
カンボジアに来た際には、世界遺産の遺跡を制覇したいところですが、4つの遺跡を1日で回るのは難しいです。最低でも3日間はかかりそうです。
まとめ
コーケー遺跡は、ピラミッド型遺跡のプラン以外にも、多くの見どころがあります。木が力強く絡みついた遺跡や碑文が残っている遺跡、美しい彫刻が確認できる遺跡など、魅力がつまった遺跡群です。カンボジア観光の際には、ぜひお立ち寄りください。
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