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朝鮮半島の複雑な歴史を体験する「板門店ツアー」と観光スポット

板門店の中心に設置された「軍事休戦委員会議場」 韓国の旅行・観光

朝鮮半島の北緯38度線の軍事境界線の「板門店(パンムンジョム)」は、いくつかの旅行社の「板門店ツアー」に参加して観光に訪れることができます。
軍事休戦委員会議場などの見学や、周辺の観光スポットを訪れて複雑な歴史を学び体感することができる観光地です。
この記事では実際に板門店ツアーに参加した筆者の体験や注意事項、見学・観光スポット、現地のお土産などについてご紹介します。

朝鮮半島・板門店の複雑な歴史

朝鮮半島の南北を一直線に分断する北緯38度線

朝鮮半島の南北を一直線に分断する北緯38度線

地球上には無数の民族が暮らしています。身近な人々が集うことによって社会が産まれ、さらに広がって国家へと発展しました。ただ、地上には人の足では越えられない海や山、川があり、自然に国境が作られました。全ての国境のラインが地形によって引かれると、全てが曲線や折れ曲がった線となることでしょう。ところが世界地図を眺めると、隣り合う国の国境線が一直線となっているところが数多くあります。日本から海を隔て最も近い朝鮮半島も、その一つです。北緯38度の緯線が、南北朝鮮、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の国境となっているのです。朝鮮半島を東西に横断する無人の地域には、南北双方からの侵入を防ぐために、延々と鉄条網や高圧電線が張り巡らされています。

朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた板門店

朝鮮半島を南北に分断する人為的な国境線は、第二次世界大戦後の冷戦によって作られました。1950年6月25日に東西の両陣営が激突する朝鮮戦争が勃発し、半島の全土が戦場と化したのです。軍火が半島の隅から隅を焼き尽くした戦闘も、ソ連でスターリンが没した数か月後の1953年7月27日に、国連軍と朝鮮人民軍及び中国人民志願軍の間で休戦協定が結ばれました。

休戦のための会議が開かれたのは、韓国のソウルから北に約50キロ、北朝鮮の開城ケソンから南に約10キロで、北緯38度線に近い寒村です。互いに軍事行動をやめ、北緯38度線を軍事境界線として、南北約2キロ、幅約4キロを非武装地帯DMZ(DeMilitarized Zone)としたのです。この中心の約800メートル四方の一画は、共同警備区域JSA(Joint Security Area)とされ、板門店(パンムンジョム)と呼ばれています。

板門店の中心に設置された「軍事休戦委員会議場」

板門店の中心に設置された「軍事休戦委員会議場」

板門店の中心には、「軍事休戦委員会議場」が設置されています。休戦協定の締結後も何度となく南北の代表が、ここで顔を合わせ互いの主張を激しく戦わせてきました。その一方で、人道支援、文化やスポーツの交流を行うことによって、南北を友好的に繋ぐ開かれた場所としての役割も果たしています。

会議場の中央には細長いテーブルが設置されています。テーブルの中心線は北緯38度線で、小さな国連の旗がたてられています。旗の下から机の上を這うマイクケーブルは、軍事境界線を象徴的に視覚化しているのです。南北の朝鮮の代表者は国境線から等間隔の位置で向かい合って座り、議論を戦わせるのでしょう。数十人しか入れない飾り気のない部屋には、張りつめた緊迫感がみなぎっているようです。

個人では立ち入れない共同警備区域を巡る「板門店ツアー」

「板門店ツアー」を企画する旅行社

「板門店ツアー」を企画する旅行社

「軍事休戦委員会議場」には個人では立ち入ることはできませんが、数社の旅行社が「板門店ツアー」を企画しています。韓国を訪れたならば朝鮮半島の歴史を象徴的に物語る現場には、どこよりも足を運びたいと思う旅行者は多いようです。
2023年現在、下記の5つの旅行社が「板門店ツアー」のプランを設定しています。どのプランも新型コロナウイルスの感染が拡大した時期には中止となっていましたが、2022年7月に再開しました。ところがその後も度々、中止と再開を繰り返し、2023年11月30日に再び中止となりました。これは同年7月にツアーに参加した米軍兵士が無断で軍事境界線を越えて北朝鮮側に入った影響によるもので、4か月を過ぎても再開できない状況のようです。「板門店ツアー」に参加を希望する場合は、出発前に各旅行社のURLにアクセスし、ツアーの実施状況を確認しておいた方がいいでしょう。

「板門店ツアー」のプランを企画する旅行社とURL

「板門店ツアー」に参加するときの注意事項

「板門店ツアー」では、「軍事休戦委員会議場」をはじめとして、共同警備区域JSAのエリアを見学することができます。ただ、外交的にナイーブな場所であるため行動に制限が加えられ、軍服を着た兵士のガイドに従って、武器を手にした兵士の姿を見ながら巡ることになります。

服装については、作業服、ジーンズ、レザーの服、半ズボン、ミニスカート、華美な服、身体に密着する服、軍服スタイル、トレーニングウェア、スリッパ、サンダル、ブランドやスポーツチームなどのロゴが大きく入ったものなどを身に着けることはできません。さらに、移動の際には2列の行列を作って歩かなければならず、大きな声で話してはいけない、指を指してはいけない、手を振ってはいけないなど、数多くの禁止事項が課せられます。
写真の撮影は限られたスポットでしか許されていません。自由を奪われるため窮屈に感じるかもしれませんが、必ずそれを超える体験ができることでしょう。注意事項はツアーの最初に、板門店安保見学館でスライドによって、わかりやすく説明されるのでトラブルは起こらないでしょう。エリアのツアーの所用時間は1時間前後です。

「板門店ツアー」の見学スポット・見どころ

北朝鮮の連絡事務所「板門閣」

北朝鮮の連絡事務所「板門閣」

板門店の中心で、簡素なライトブルーの外壁で覆われた「軍事休戦委員会議場」の北側には、北朝鮮の連絡事務所の役割を担っている「板門閣(パンムンガク)」が建っています。

北朝鮮の連絡事務所「板門閣」

地上3階建てで飾り気のない外観をもつ「板門閣」では、2018年5月16日に南北首脳会談が行われました。大韓民国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、歴史的な面会を果たしたのです。

韓国の連絡事務所「自由の家」

韓国の連絡事務所「自由の家」

「軍事休戦委員会議場」を挟んで「板門閣」と逆の南側には、韓国の連絡事務所である「自由の家」が建っています。地上4階建ての建物の上部で、なだらかな曲線を描く屋根が印象的です。館内には大小の会議室、控室、記者室などが設けられています。

韓国の連絡事務所「自由の家」

韓国のツアーでは北朝鮮側の「板門閣」には近づくことさえできませんが、「自由の家」は内部を見学することができます。ただ、いたるところに憲兵の姿が見えるので、身がすくんでしまうかもしれません。

「軍事休戦委員会議場」、「板門閣」、「自由の家」は、板門店の中心施設として、朝鮮戦争の休戦以来、南北対話の重要な機能を果たし続けています。

複雑な南北関係を物語る「帰らざる橋」や「ポプラ事件記念碑」

複雑な南北関係を物語る「帰らざる橋」

板門店のエリアには中心施設の他にも、複雑な南北関係を物語る数々のモニュメントが残されています。エリアの南西端の沙川江(サチョンガン)に架かる「帰らざる橋」では、1953年の朝鮮戦争の休戦のときに捕虜の交換が行われました。捕虜達は、この橋の上で南北いずれに行くかを選ばなければなりませんでした。方向を決め歩き始めた後は、いかなる理由があろうと引き返すことができなかったことから、「帰らざる橋」と呼ばれるようになったのです。

複雑な南北関係を物語る「ポプラ事件記念碑」

「帰らざる橋」は休戦後には、北朝鮮関係者が板門店の共同警備区域内へ入るためのルートとなっていました。橋の近くには、かつてポプラの並木がありました。そのポプラは大きく育ち、1976年には国連軍の監視所の視界をさえぎるまでになったのです。そこで韓国軍とアメリカ軍の兵士がポプラの剪定を始めました。これに気づいた北朝鮮軍兵士は作業を中止するよう勧告しましたが、作業が続けられたためアメリカ軍兵士を殺害したのです。その跡地には「ポプラ事件記念碑」が設置されています。

北朝鮮の超レア商品のお土産が並ぶ売店

板門店のエリアはナイーブな雰囲気で包まれていますが、売店には少し異なったムードが漂っています。兵士が行き交う共同警備区域にあるので、アーミーデザインのジャケットやTシャツの品揃えは充分です。DMZの文字が記されたチョコレートなどのスナック類は、ここでしか買えないオリジナル商品でしょう。さらには、目と鼻の先の北朝鮮の紙幣やアルコール飲料、ワイン、焼酎までお土産品が販売されているのです。これは日本ばかりでなく韓国でさえも手に入れることができない超レア商品でしょう。

北朝鮮の超レア商品のお土産が並ぶ売店

板門店はソウルからバスで1時間あまりですが、その道中にも数々の見所があります。「板門店ツアー」の中にも、「統一公園(トンイルゴンウォン)」などに立ち寄るプランが企画されています。

板門店周辺の観光スポット

板門店への道中に訪れる「統一公園」

板門店への道中に訪れる「統一公園」

「統一公園」は、北緯38度線近くの京畿道(キョンギド)坡州邑(パジュウプ)鳳棲里(ポンソリ)に作られた公園です。ここには休戦会談時に、国連従軍記者センターが設けられていました。1973年6月に朝鮮戦争で韓国軍将兵の護国精神を称えるとともに、朝鮮半島の統一を願って造園されたのです。

園内には、「韓国戦殉職従軍記者追念碑」、「蓋馬(ケマ)高原反共遊撃隊慰霊塔」などの他に「肉弾十勇士忠勇塔」が設置されています。「肉弾十勇士忠魂塔」は、1949年5月にソンアク山戦闘で壮烈に戦死した歩兵1師団11連隊の勇士達を称えています。

「板門店ツアー」に組み込まれる板門店周辺のスポット

「統一公園」の他にも、「臨津閣公園(イムジンガクゴンウォン)」、「自由の橋」、「第3トンネル」、「都羅(トラ)展望台」、「都羅山(トラサン)駅」などをツアーの訪問スポットに加えるプランもあるようです。

「臨津閣公園」は、軍事境界線から僅か7キロ南に位置する平和祈念公園です。臨津閣一帯は朝鮮戦争で激戦地となったところで、現在でも数多くの戦争遺物が残されています。展示館の他に、遊園地などの新しい施設ができ、大規模な観光スポットとなっています。臨津閣の近くを流れる臨津江に架かる「自由の橋」では、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた後に、捕虜達が「自由万歳」と叫びながら渡りました。「第3トンネル」はソウルの北約52キロメートルに北朝鮮が掘ったトンネルです。幅約2メートル、高さ約2メートル、長さ約1635メートルのトンネルでは、1時間当たり3万人前後の兵士が移動できたと推定されています。「都羅展望台」からは北朝鮮の街並みが見渡せ、「都羅山駅」は北朝鮮との国境に位置し、韓国の最北端の駅です。

「板門店ツアー」を選ぶ場合には、前後に訪れるスポットもチェックし、より魅力的なプランを見つけ出したいものです。

価値観を変える「板門店ツアー」

韓国は日本に最も近い国で、K-POPやコスメ、ビューティー、ファッションなどの分野での注目度がアップし、旅行先として人気も急上昇中です。その一方で、第二次世界大戦後も複雑な歴史をたどっています。ソウルなどの近代的な都市でエンジョイする合間に、北朝鮮との国境近くにも足を向けてみたいものです。「板門店ツアー」に参加すれば、世界の平和を見つめなおし価値観を変えることができることでしょう。