旅行者にも人気のイタリア・フィレンツェは、芸術作品の宝庫です。
芸術作品が鑑賞できるのは、美術館だけに収まり切りません。
フィレンツェでは、ふらっと入った教会にびっくりするような作品が置かれています。
お買い物、散策の休憩がてらに至極の芸術作品に癒されてみるのはいかがでしょう。
芸術が大好きな方にはもちろん、あまり芸術に興味がないから高い入館料(ウフィツィ美術館の入館料は2019年4月現在、予約費込みで約3000円!!)を払ってまで・・・という方にもぴったりな、無料で鑑賞できるフィレンツェの至極の芸術作品をご紹介します。
1. ポントルモ 「十字架降架」 (サンタ・フェリチタ教会)
ヴェッキオ橋を渡ってすぐ、皮手袋の老舗「MADOVA」から徒歩1分、サンタ・フェリチタ教会には、ポントルモ作「十字架降架」があります。
ポントルモは、1530年頃に登場した、自然を超え、奇想や奇抜さを好み、目に見えるものから目に見えない真実を描き出そうするなかで生まれた芸術様式「マニエリスム」を代表する画家です。
ミケランジェロやデュラー、ボッティチェッリなどの作品からも多大な影響を受けています。
マニエリスムの作品は、空間が膨張され奇妙に引き延ばされていて非現実的です。
空間が膨張されているのでこの作品の人々は浮いているように見えます。
全員が違う方向を見、一人一人の表情が豊かで声が聞こえてきそうです。それぞれのセリフを考えながら鑑賞するのもおもしろいかもしれません。
向かって右の茶色い服のおじさん?は、作者ポントルモの自画像とされています。
10歳で孤児となったポントルモ少し難しい性格だったようでこの作品を描いているとき、だれにも見られないように、囲いを作って作業していたようです。
■サンタ・フェリチタ教会 ・一般公開時間: 月曜日―土曜日 9:00-12:00/15:30-17:00 ・休業日: 日曜 ・住所: Piazza Santa Felicita 3
2. フィリッピーノ・リッピ 「聖母子と聖ジョバンニーノ」 (サント・スピリト教会)
教会のあるサン・スピリト広場では、毎月第二日曜日に市場が催されます。
骨董品、家具、食料品、洋服、古着など、何でも揃います。見て歩くだけでイタリアの文化に触れることができます。
レストランも多い界隈なので食事の前に立ち寄ってもいいですね。
この教会には、フィリッピーノ・リッピの作品 「聖母子と聖ジョバンニーノ」 があります。
イタリア語では、「Pala Nerli」 と言います。
Pala=祭壇画、 NERLI=フィリッピーノにこの絵(祭壇)を注文したフィレンツェの有名な一族の名前です。
フィリッピーノの父は、有名画家で修道士のフィリッポ・リッピ(フィリッポの息子だから彼の名前は、小さいフィリッポ=フィリッピーノ)、母は修道女でした。
修道士と修道女の恋愛は当時、大変なスキャンダルでしたが、メディチ家のコジモが仲裁に入りなんとか騒ぎがおさまりました。
母は、彼が2歳の時に修道院に戻ってしまい、父は彼が12歳の時に亡くなりました。
そんな境遇の中で父の弟子であった 「ヴィーナスの誕生」、「春」で有名なボッティチェッリのところに身を寄せ、弟子して数多くのボッティチェッリの作品に協力しています。その影響からか初期の作品は、ボッティチェッリの作品に良く似ています。
この「聖母子と聖ジョバンニ―ノ」には幼いキリストと聖ジョバンニ(ジョバンニーノ=小さいジョバンニ)が描かれています。聖ジョバンニとは、日本では洗礼者ヨハネのこと、キリストを洗礼した聖人です。
聖ヨハネは、いつもらくだの皮の服を着ていて、幼い時からも含めて半裸です。
この少し野蛮な彼は、たくさんの作品でキリストの傍らに描かれています。
彼は、イナゴと蜂蜜を食べていたそうです。そんな人間臭い聖ヨハネの存在は、荘厳な宗教画を身近なものにしてくれます。
この教会には、今は入場料をとるようになってしまいましたがミケランジェロ作の「十字架像」の飾ってある聖具室もあります。
部屋に入るためには3ユーロ必要ですが、部屋の入口付近からもその姿を見ることができます。
■サント・スピリト教会 ・一般公開時間 (平日)9:30-12:30 / 16:00-17:30 (日曜・祝日)11:30-12:30 / 16:00-17:30 ・休業日: 水曜日 ・住所: Piazza Santo Spirito, 30
3. ギルランダイオ 「牛飼いの礼拝」 (サンタ・トリニタ教会)
サンタ・トリニタ教会は、フェラガモ宮殿、本店の目の前の教会です。
余談ですがフェラガモに勤める友達が言うには、フェラガモ宮殿には実際にサルバトーレ・フェラガモ夫人が住んでいるそうです。
そんなブランド通りにあるサンタ・トリニタ教会の中には、ギルランダイオ「牛飼いの礼拝」があります。
大天使ガブリエルによる救世主キリストの誕生の知らせを受けた牛飼いたちが礼拝に来ている様子が描かれています。
幼子キリストを指さしている人物は、作者ギルランダイオです。
礼拝に来た人々は各々の表情で喜びを表しています。
子羊をお祝いにもってきた人もいます。彼の作品は宗教画が主でありますが、その中に実在の人々の日常生活が描かれています。
ギルランダイオは、ミケランジェロが最初に師事した画家です。ミケランジェロの先生かと思うとまた視点が変わってきますね。
■サンタ・トリニタ教会 ・一般公開時間:月曜日ー日曜日 7:00-12:00/16:00-19:00 ・住所:Piazza di Santa Trinita
4. ボッティチェッリなどの作品(オンニサンティ教会)
(ジョット「キリスト磔刑」 、ギルランダイオ「聖ヒエロニムス」・「最後の晩餐」、ボッティチェッリ「聖アゴスティーノ」、 ボッティチェッリのお墓、他)
サンタ・トリニタ教会から駅の方に歩いて2分、高級ホテルの立ち並ぶオンニサンティ広場に、オンニサンティ教会はあります。
「そんなに絵画には興味はないわー。」という人でも知っている作品が多いボッティチェッリ。
元々ボッティチェッリファンの方でも、ウフィツィ美術館で彼の作品に魅了されてファンになった方でも外せない、是非訪れることをお勧めする教会です。
ここには、彼の作品「聖アゴスティーノ」、彼のお墓があり、そして「ヴィーナスの誕生」のモデルと言われるルネサンス一の美貌の主、シモネッタ・ヴェスプッチもこの教会に埋葬されています。
「聖アゴスティーノ」 に対比して置かれているギルランダイオの「聖ヒエロニムス」も必見です。
祭壇奥には、西洋絵画の父、フィレンツェ、ドーモの鐘楼のデザインも任されたジョットの「キリスト磔刑」があります。
これには、日頃の心の汚れが洗われるような青が用いられています。
また、月曜・土曜日の朝のみに公開される、ギルランダイオの「最後の晩餐」も、もし日程があえばぜひご覧ください。
「最後の晩餐」は、様々な画家がテーマにしていますが、いつも誰がユダ(裏切者)かと探すのが楽しみです。
ユダは大抵、反対側に座っている人、お金が入った袋を持っている人、キリストからパンを渡されている人のどれかです。
■オンニサンティ教会 ・一般公開時間: 月曜日ー日曜日 9:30-12:30 / 16:00-19:30 ※水曜午前中休み ・住所:Borgo Ognissanti, 42
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した芸術作品を鑑賞できる教会を全て回っても徒歩一時間以内です。
どの作品も、もし来日したならば、その一点のために長蛇の列ができるであろう重要作品ばかりです。
そんな作品が、ここフィレンツェでは、「えー!??いいの?もっと重厚に展示しなくって??」という感じで展示されています。
美術館に移され展示された絵画もすばらしいですが、元来あるべき場所で鑑賞すると光、匂い、時代、様々なものを感じることができます。
しかもこれらはすべて無料です。フィレンツェに来て見逃すのはもったいない!!!
■フィレンツェで無料鑑賞できる芸術作品と教会地図 (Googleマップ)
今回ご紹介した教会をマップでロケーションをご紹介します。
Buona passeggiata!!