カンボジアの人気遠方遺跡の1つでもある、ベンメリア。崩れた遺跡により、独特な雰囲気のある場所です。その雰囲気のおかげで、「ジブリ映画のモデルになった?」とも言われるほどです。今回は、ベンメリアの歴史や見どころ、行き方についてご紹介します。
ベンメリアの歴史
ベンメリアは、12世紀中ごろに建てられ、完成はアンコールワットよりも早かったのではないかと言われています。アンコールワットより規模は小さいですが、回廊がある点やお堀がある点から、アンコールワットとの類似点が多くあると言われています。そのため「東のアンコールワット」なんて呼ばれることもあります。
しかし、他の遺跡のように、誰が何の目的で作られたか、明確な情報は解明されていません。本来であれば遺跡に残された碑文から歴史を読み取りますが、ベンメリアの場合は遺跡の崩壊が進み、発見時には、碑文がほとんど残っていませんでした。
では、なぜベンメリアはここまで崩壊が進んでしまったのでしょうか。3つの理由が考えられます。
①アンコールワットが完成してからは、アンコールワットがほとんど都になっていたこと →ぽつんと密林にベンメリア状態 ②1432年にアンコール王朝が滅んでしまったこと →ますますベンメリアのことは忘れさられる ③ポルポト政権下での激しい内戦 →密林であるベンメリアの立地をいいことに、たくさんの地雷が埋められる
複数の原因が悪く重なった結果、ベンメリアの崩壊が進んでしまったと言えるでしょう。
ポルポト政権の支配が終わり、1992年にベンメリアは世界遺産暫定リストに登録されました。この時点では、地雷の影響により、まだ一般には観光できない状態でした。約10年かけて、2001年にようやく一般向けに観光ができる状態になりました。
ベンメリアへの行き方・入場料
ベンメリアは、シェムリアップから北東方向に約60km進んだ先にあります。手段は、車やトゥクトゥクがおすすめです。移動時間は約1時間~1時間30分ほどです。トゥクトゥクの場合、往復で約30$前後になります。他の遺跡と組み合わせる場合には、料金が変わってくるので注意しましょう。
バイクでの移動はおすすめできない
また、バイクでの移動も可能ですが、あまりおすすめしません。シェムリアップからベンメリアへの道路は、以前より整備されましたが、それでも、でこぼこ道でバイクのハンドルがきりにくかったり、砂ぼこりも多いです。安全に移動するには、車やトゥクトゥクがおすすめです。
他の遺跡と組み合わせた観光
ベンメリアは、他の遠方遺跡の通り道にあることもあり、組み合わせがしやすい遺跡の1つです。1日ツアーであれば、下記のような組み合わせが可能です。
- バンテアイスレイ + プノンクーレン + クバールスピアン + ベンメリア
- ベンメリア + コーケー遺跡
- ベンメリア + プレアヴィヒア
- ベンメリア + コーケー遺跡 + プレアヴィヒア(少々弾丸になります)
ベンメリアの入場料
また、現在ベンメリアは5US$の入場料とアンコールパスで入場が可能です。以前は、5US$の入場料のみで入場ができましたが、2020年よりアンコールパスのチェックも合わせて始まりました。
アンコールパスは、下記3種類があります。アンコールパスはベンメリアでは購入できません。多くのガイドさんやドライバーさんがパスを持っているか出発前に確認し、アンコールパスの購入ができるチケットセンターに立ち寄ってくれますが、念のためご自身でも覚えておくとトラブルなく観光ができるでしょう。
パスの種類 | 金額 | 有効期間 |
---|---|---|
1日券 | 37$ | 購入日のみ有効 |
3日券 | 62$ | 購入日より10日間 |
7日券 | 72$ | 購入日より1か月間 |
ベンメリアの見どころ
それでは、ベンメリアの見どころについてご紹介していきます。
ナーガ像
ベンメリアは、遺跡全体はほとんど崩れていますが、一方でナーガ像の保存状態はとても良いです。写真の南側の参道にある、ナーガ像は、2009年に土の中から発見されたものです。ナーガの歯まで、しっかり確認できることから、非常に保存状態が良いものです。また、東テラスの欄干にあるナーガ像も、保存状態がいいです。
ナーガは、蛇神で、このように複数の頭があるのも特徴的です。ナーガは、ヒンドゥー教と仏教の両方の宗教でまつられる、守護神です。そのため、ベンメリア以外の遺跡でもよく見かけますし、カンボジアの道路やホテルなどでも見かけます。
乳海攪拌(にゅうかいかくはん)
ベンメリアのまぐさ石です。まぐさ石とは、出入り口や窓などの上に、水平に渡した石のことです。本来であれば、遺跡の上部にあったものですが、遺跡崩壊のために、現在は観光通路の横にこのように立てかけられています。
このまぐさ石には、アンコールワットや他の遺跡でもみることのできる、「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」が描かれています。この彫刻からは、ヴィシュヌ神、亀王クールマ、左右で蛇を引っ張りあう神々と阿修羅の姿を確認することができます。こけがついており、少しわかりずらいですが、これもまたベンメリアならではの、味だと感じます。
ラーマーヤナ
この彫刻からは、ラーマーヤナのワンシーンを読み取ることができます。ラーマーヤナとは、古代インドの大長編叙事詩です。ヒンドゥー教の聖典でもあります。
この彫刻の中には、ハヌマーン(神猿)、ラーマ王子、シータ姫がいます。シータ姫が自分の身の潔白を証明するために、炎の中に身投げするシーンが描かれています。
真っ暗な通路
ベンメリアの第二回廊の北側には、実は真っ暗な通路があります。光がほとんど入らないので、本当に真っ暗です。何の目的で作られたかは、わかりませんが、他の遺跡にはない雰囲気を味わうことができます。観光の際には、足元に気をつけながら進みましょう。
遺跡で遊ぶ子どもたち
ベンメリアでは、現地の子どもたちをよく見かけます。彼らは、遺跡を遊び場にしており、このような崩れた遺跡の中で、元気に遊んでいます。観光用の通路がないところも、いとも簡単にのぼって、楽しそうにしています。まるで遺跡が、公園の遊具のようです。
子どもたちの中には、観光客を誘って、観光用の通路からでは見えない、とっておきの場所に連れて行ってくれることもあります。ただ、写真をとった後に、お金を請求してくることがほとんどなので、必要なければ、しっかり断るようにしましょう。
ベンメリアと地雷
カンボジアでは、1970~90年代まで内戦が続いていました。その内戦の間に、埋められた地雷は約400~600万個と言われています。そして、現在も尚、その当時埋められた地雷によって、命を落とす方や負傷する方がいます。カンボジアにとって、地雷は深刻な問題の1つです。
当時の作戦では、敵が潜んだり、陣地を作りやすそうな密林に地雷を埋める傾向がありました。そして、ベンメリア周辺は敵をおびき寄せ、地雷で攻撃するには絶好の立地でした。そのため、ベンメリア周辺には多くの地雷が埋められました。
ベンメリアはアンコールワットができてから影の存在になっていたことと、地雷が埋められて近づけなかったこともあり、他の遺跡よりも発見が遅かったです。さらに、遺跡修復よりも地雷撤去の活動の方が優先されたこともあり、遺跡発見当時の雰囲気が味わえる良さもあります。
遺跡中心部分の地雷撤去が完了した2001年より、ベンメリアは一般に観光ができるようになりました。寺院内の地雷の撤去は完了していますが、遺跡周辺の地雷は、まだ一部撤去ができていません。地雷が撤去できていない部分には、「Danger!! Mines!!」と書かれた赤い看板が立てかけられているので、絶対に看板の中には入らないようにしましょう。
ベンメリアは、ジブリ映画のモデルになった?
ベンメリアは、「天空の城ラピュタのモデルになった遺跡」と言われることがあります。確かに、ベンメリアのもつ廃墟感や緑に包まれた神聖な雰囲気は、ラピュタを彷彿させますよね。
ただ、「天空の城ラピュタ」が公開されたのは、1986年です。そのころのカンボジアと言えば、内戦真っただ中で、ベンメリアどころか、カンボジアへの入国も難しかったことが予想されます。そのため、ベンメリアが「天空の城ラピュタ」のモデルになった可能性は、とても低いと考えられます。
ベンメリア観光の足元の注意・準備
ベンメリアは、観光用の通路がありますが、それでも、急な通路を上り下りしたり、場合によっては石を登ることもあるので、動きやすく、はきなれているスニーカーがおすすめです。コケで滑る可能性もあるので、しっかり足が固定されているものがいいでしょう。
ベンメリア周辺情報:トイレやレストラン
トイレは、ベンメリアの5US$のチケットを買うところにあります。遺跡内にはないので、トイレはここで済ませておくことをおすすめします。
また、レストランは、遺跡の目の前に売店兼ローカルレストランがあります。水や飲み物はここで購入ができるので安心です。
まとめ
ジブリ映画「天空の城ラピュタ」に雰囲気が似ていることから、日本人にも人気のあるベンメリアです。他の遺跡ともツアーの組み合わせがしやすく、遠方遺跡周遊の際にはおすすめの遺跡の1つです。
内戦の影響により、他の遺跡よりも整備が遅れてしまいましたが、だからこそ手があまり加わっていない、発見当時の雰囲気が味わえる、趣のある遺跡です。
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