近年、日本でも年々輸入量が増えている南アフリカワイン。特に南アフリカのケープタウンには有名なワインの産地があります。南アフリカワインは上質なのに、値段が安く、お手軽に美味しいワインを味わうことができるので人気です。
本記事では、現地在住者が南アフリカワインの魅力と南アフリカで訪れたいワイナリー、おすすめの南アフリカワインをご紹介します。
南アフリカワインが注目されている理由
南アフリカワインの特徴
ケープタウンの東方は地中海気候で肥沃な土地のため、古くからワイン造りのためのブドウ栽培が行われてきました。
南アフリカワインの特徴は、価格がリーズナブルであるうえに高品質なことです。
南アフリカワインはフルーティーで、飲みやすく、バランスのいい上品なワインです。
また、農薬の使用量などにおいても厳しいガイドラインが設けられて、酸化防止剤の使用量も世界で最も少ない国のひとつとして注目を浴びています。
さらに、南アフリカには「人・環境・教育」など、現地の社会発展につながるワインが多数あります。例えば、経済的に貧しい黒人たちに直接利益を還元できるフェアトレード・ワインや子供たちの教育支援に役立てているプロジェクトワインなどもあります。
南アフリカワインの歴史
南アフリカワインの歴史は、約360年前(1655年)にオランダ人のヤン・ファン・リーベックがブドウの苗木をヨーロッパからケープタウンに持ち込んだことで始まりました。
1659年2月2日に南アフリカ初のワインが生産され、17世紀後半にヨーロッパでの宗教改革のため多くのユグノー(新教徒のフランス人農民)が南アフリカに渡ってきたことにより、ワイン造りがさらに発展しました。
ナポレオンが活躍した1800年前後には、南アフリカ産のデザートワイン(コンスタンシア・ワイン)がヨーロッパの王侯貴族らに親しまれました。
アパルトヘイト政策時代は各国の経済制裁により世界への輸出が閉ざされていましたが、1990年代前半の人種差別撤廃後、世界市場への門が再度開かれました。
その後、高品質でリーズナブルな南アフリカワインは欧米でも絶賛され、21世紀に入っても生産量・輸出量ともに飛躍的に伸びています。
2009年には誕生350年を迎え、ワイン生産量世界第9位の地位を誇るまでに発展しました。
おすすめのワインの産地
南アフリカワインの名産地「ワイン・ランド」
現在南アフリカにある20以上のワイン産地のうち、ケープタウンの北東に広がるステレンボッシュ、パール、フランシュフック、サマセット・ウエスト、ウェリントンを中心とする5つの地域が、南アフリカワインの中心地で、「ワイン・ランド」といわれています。
ケープタウンから東へ車で30分〜1時間ほどの場所です。
ここは南アフリカワインの名産地として有名で、数多くのワイナリーが点在しています。
ケープ・ダッチ様式と呼ばれる美しい建物が点在し、山の斜面や麓にはブドウ畑が続いています。
多くのワイナリーでは、酒造や工場の見学ツアーとワインテイスティングを行っており、なかにはレストランやカフェを経営しているところもあります。
町中には国の歴史遺産になっているゲストハウスやホテルもあるので、ここでは美味しいワインと料理を堪能でき、のんびり過ごすことができます。
ステレンボッシュ
ワイン・ランドの拠点となるのがステレンボッシュです。ケープタウン市内から車で45分ほどの場所です。ステレンボッシュはサイモン・ファン・デル・ステルによって1679年に創設された、ケープタウンに次いで南アフリカで2番目に古い町です。
ステレンボッシュには、家族経営の小規模なものからレストランや宿泊施設を備えた大規模なものまで、数多くのワイナリーが点在しています。
なかでも、赤はカベルネソーヴィニョンを中心としたボルドー系品種に優れており、白はシュナンブランなどバランスのよいワインが有名な場所です。
見どころを回るだけならケープタウンからの日帰りも可能ですが、ワイナリーは市街地から離れているため、徒歩で巡ることはできないので注意です。
パール
山々に囲まれた小さな町パール。ケープタウン市内から車で45分ほどの場所です。パールはステレンボッシュの北東に位置しています。世界で2番目に大きい御影石Granite Rockと山に囲まれたベルグ・リバー渓谷に、17世紀に開かれました。
御影石がきらきらと真珠のように輝くことから、パールという名前がついたといわれています。
特に赤ワインの品質の良さで有名な場所です。
フランシュフック
ケープ地方でも有名なグルメの町フランシュフック。ケープタウン市内から車で1時間ほどの場所です。フランスから逃れてきた新教徒ユグノー派に1688〜1690年に配分された地域で、地名は「フランス人地区」から来ています。彼らによって南アフリカのワイン造りは発展しました。
フランシュフックには現在約40ものワイナリーがあります。特にケープ地方のグルメ首都としても有名で、フランス風の料理を出す洗練されたレストランが多いです。
優れたスパークリングワインの産地として知られています。
南アフリカワインの原点「コンスタンシア」
コンスタンシアは1685年に南アフリカで初めてブドウ栽培が始まった地域です。
ケープタウン市内から車で20分ほどの場所で、観光バスも出ています。ワイン・ランドに比べてケープタウン市内からの交通の便がよく、日帰りでワイナリーを巡りやすいです。
ナポレオンが愛飲したとされるデザートワインもあります。
南アフリカのおすすめワイナリー7選
Jordan Wine Estate(ステレンボッシュ)
元々はブドウ栽培のみを行っていましたが、1993年に地質学者のゲイリーと妻キャシーによって醸造設備とセラーが建設され、今では世界でも有数のワイナリーに発展しました。
ここでは湖を眺めながらワインテイスティングができます。ジョーダンのワインは上質で、希少なワインを楽しむことができます。
特にワイナリーに併設されているレストランの料理が繊細でとても美味しいので、ぜひレストランにも足を運んでみてください。
Tokara Wine Estate(ステレンボッシュ)
南アフリカの銀行家、ヘリット・フェイラによって設立されたワイナリー。
TOKARAという名前は、二人の子どもの名前ThomasとKaraに由来します。
テイスティングルームはガラス張りになっていて、テイスティングルームからは広がるブドウ畑を眺めることができます。ここのオリーブオイルもおすすめです。
Delaire Graff Estate(ステレンボッシュ)
世界的に有名なジュエリーブランドのGraffがオーナーのDelaire Graff Estateは5つ星のラグジュアリーロッジです。
エステート内にはワイナリー、宿泊施設、スパ、レストラン、グラフのジュエリーショップまで併設されています。ワイナリーから眺めるブドウ畑と山々の景色は圧巻です。
オブジェやアート作品が多く飾られているので美術館のような雰囲気があります。
レストランのみの利用も可能です。ガラス張りのレストランはラグジュアリーな雰囲気で、料理はとても美味しく、ボリューム満点なので満足感がありました。
Vrede en Lust Wine Estate(パール)
パール郊外、サイモンバーグ山脈の麓にある家族経営のワイナリーです。
綺麗な薔薇の花壇に囲まれた建物のなかにテイスティングルームがあります。テイスティングルームからの景色は絶景です。
レストランのほか、ケープ・ダッチ様式の豪華な宿泊施設も併設しています。
Babylonstoren(フランシュフック)
青い鳥のマークが目印のワイナリー「Babylonstoren」。
ここはワイナリーだけでなく、広大な農園、花壇、ホテル、スパ、プールまであります。
ここのファームショップではワインはもちろん、ここの農場で採れたオリーブやチーズをはじめ、ラベンダーから作られたハンドクリームやアロマオイルまで売っています。
特におすすめなのは併設されているレストラン「Babel」。農場で採れた野菜をふんだんに使った料理は絶品です。
Groot Constantia(コンスタンシア)
南アフリカで最初に造られたワイナリーで、現在ではいちばん小さいワイナリーです。
ここではチョコレートのペアリングのテイスティングを楽しむことができます。
「Grand Constantia」というデザートワインはナポレオンが愛飲したともいわれるワインで、フルーティーな味わいがとても美味しいです。
Beau Constantia(コンスタンシア)
ここのワイナリーは高台にあるので、天気がいい日はテイスティングルームから広がるブドウ畑を眺めることができます。
ワインテイスティングはもちろん、併設されているレストラン「Chefs Warehouse Beau Constantia」のコース料理は繊細でどれも絶品です。
ワイナリーでのおすすめ体験
ワイナリー見学・ワインテイスティング
ワイナリーに行ったらぜひ体験してほしいことはワイナリー見学とテイスティングです。
一般的に3〜5種類のワインをテイスティングできます。
チョコレートやチーズとペアリングができるワイナリーもあります。
テイスティングの前にはワインの歴史や味などの説明を聞くことができるのでワインについての知識が深まります。
ほかでは入手できない貴重なワインを購入することもできますよ。
気に入ったワインはその場で購入ができるので、ワイナリーに訪れた際はぜひ試してみてください。
また、あらかじめワイナリー見学やテイスティングの時間が決まっていたり、予約が必要なところもあるので、事前にチェックしておきましょう。
美味しい料理
ワイナリーに併設されたレストランの多くは、味に定評があり、世界的にも高い評価を受けています。各ワイナリーのワインに合った料理を楽しむことができるので、ワイナリーを訪れた際はぜひ食事も一緒に楽しんでみてください。
ワイナリーに併設されたレストランはとても人気のため、できる限り早く事前に予約をしておくことをおすすめします。
ワイナリーに滞在する
ケープタウン市内から日帰りでもワイナリーを数か所訪れることはできますが、
美味しいワインと料理を思う存分堪能したい人は、ワイナリーに併設された宿泊施設に滞在するのがおすすめです。
別荘感覚で滞在できる一軒家からゲストハウス、豪華なラグジュアリースイートまでさまざまなタイプの宿が揃っています。時間が許す方は、ぜひ滞在してみてください。
南アフリカのワイナリーの巡り方
Wine Tram(ワイントラム)で巡る
フランシュフックには廃線となった鉄道を走るトラムと、バスを利用してのワイナリツアー「Franschhoek Wine Tram」があります。
ケープタウン市内から車で1時間15分ほどの「Groot Drakenstein Terminal」からツアーは出発します。
現在は5つのコースがあり、1つのラインで7〜9か所のワイナリーを巡ることができます。
約1時間ごとにバスやトラムが周回してくるので、好きなタイミングで移動ができます。
行きたいワイナリーを通るコースを選びましょう。トラムに乗り込んだらウェルカムワインで乾杯し、出発します。
コースごとに時刻表があり、時間ぴったりに出発するので時間に注意しながら回りましょう。
全て巡りたい人はどんどん次の場所に移動してもいいですし、ランチや散策をしながらゆっくり巡りたい人は行きたいワイナリーを絞って回ることもできます。
ワイントラムの料金には各ワイナリーのテイスティングや食事は含まれていないので、行きたいワイナリーのテイスティングや食事は事前に予約をしておくと安心です。
観光バスで巡る
ケープタウンの観光バスにはワイナリーを巡る路線があります。
特におすすめなのはコンスタンシアを巡る路線です。
ケープタウン市内中心地から出発し、現在はコンスタンシアの3カ所のワイナリーを巡ることができます。
約30分ごとにバスが周回しており、バスの現在地をスマートフォンで確認ができるのでとても便利です。好きなワイナリーで降りて、ランチや散策を楽しみたい人は長めに滞在することができます。
誰が運転するのかという心配なしにワインを楽しむことができるのは嬉しいですよね。
ワインランドまで行くパッケージもあります。
個人で巡る
時間を気にせず、ゆっくりワイナリーを巡りたい人はツアーに参加せず、個人で巡るのがいいでしょう。個人で行くなら配車アプリがおすすめです。ケープタウン市内からステレンボッシュまで約45分、片道R400程度(約3,200円)なので、配車アプリでもそれほど高くはありません。
しかし、ステレンボッシュからパールやフランシュフックへの公共の交通機関はないので注意してください。
おすすめの南アフリカワイン
南アフリカのワインは、ヨーロッパワインのエレガンス、南半球の果実味、その両方が融合した味わいといわれています。日本人のテイストにも合うので近年人気が高まっています。
白ワイン
シュナンブラン、シャルドネ、ソーヴィニヨンブランが人気です。南アフリカはシュナンブランの世界一の作付け面積を誇っています。シャルドネもフランスに負けないエレガントで秀逸なものがたくさんあります。
商品 | 値段 | 購入できる場所 |
Limited Release Chenin Blanc 2021 (TOKARA) | R590 (約4,720円) | Tokara Wine Estate (ステレンボッシュ) |
Terraced Block Chardonnay 2022 (Delaire Graff) | R915 (約7,320円) | Delaire Graff Estate (ステレンボッシュ) |
赤ワイン
ピノタージュは、南アフリカの土着品種です。フルーティーな物が多く、シラー(シラーズ)、カベルネソーヴィニヨンなども秀逸なものが揃っています。
商品 | 値段 | 購入できる場所 |
KANONKOP Kadette Pinotage | R145 (約1,160円) | スーパー |
7つの椅子シリーズ | R500 (約4,000円) | Boekenhoutskloof(フランシュフック) スーパー |
The Chocolate Block | R280 (約2,240円) | Boekenhoutskloof(フランシュフック) スーパー |
スパークリング
南アフリカは、シャルドネが優秀なので、そのシャルドネから作られるスパークリングも有名です。
商品 | 値段 | 購入できる場所 |
KRONE | R210(約1,680円) | スーパー |
ワイントラムの体験レポート
私が「Franschhoek Wine Tram」のツアーに参加した際の様子をご紹介します。
行きたいワイナリーが決まっていたので2か所に絞ってゆっくり巡りました。
- 8:15ケープタウン市内出発
- 9:30Groot Drakenstein Terminalに到着
- 9:35ワイントラムに乗車!
ウェルカムワインで乾杯 - 9:50Vrede en Lust Wine Estateに到着
ワインテイスティング - 10:50Vrede en Lust Wine EstateからBabylonstorenに移動
- 11:10Babylonstorenに到着
散策、お土産購入 - 12:30「Babel」で昼食!
- 14:40BabylonstorenからGroot Drakenstein Terminalに戻る
- 15:20Groot Drakenstein Terminalに到着
おわりに
いかがでしたでしょうか。南アフリカには数えきれないほど多くのワイナリーが点在しています。そのなかから自分好みのワインをぜひ見つけ出してくださいね。